【ふとんのお手入れ】羽毛ふとん『リフォーム(仕立て直し)する』のと『新しく買い換える』のどちらがお得?

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  • 目次
    1.よくあるご質問『この羽毛ふとんリフォーム出来ますか?』
    2.まずはお使いの羽毛ふとんの状態を見極めましょう
    3.重要なのは中に入っている羽毛の質
    4.リフォームしない方が良い羽毛ふとん
    5.大切なのはコミュニケーションに基づく提案力
    6.寝具のプロにご相談ください

1.よくあるご質問『この羽毛ふとんリフォーム出来ますか?』

実のところ、どのような羽毛ふとんであっても、よほどの事でもない限りリフォーム(仕立て直し)しようと思えばリフォームすることが可能です。

ここで大切になってくるのが、せっかく高いお金を掛けて羽毛ふとんをリフォームするのですから、それに見合った仕上がり・満足感が得られるかどうか?という部分です。

例えば『3万円掛けて羽毛ふとんをリフォームするのであれば、同じ3万円で新しく羽毛ふとんを買った方が良いのでは?』と・・・お考えの方は多いのではないかと思います。

最初に結論を申し上げておきますと、あるランク以上の羽毛ふとん(目安としてはご購入価格が5万円以上)の場合、新しく買う場合と比べて、半分から3分の2程度の費用で同程度の仕上がりのリフォームをすることが可能です。

2.まずはお使いの羽毛ふとんの状態を見極めましょう

逆に言うと、ランクの低い羽毛ふとんの場合、リフォームしない方が良いということになります。

そういった判断をするためには、現在お使いの羽毛ふとんの状態を見極めることが重要となります。

例えば下のような羽毛ふとんはいかがでしょうか?

実はこれ、リフォームしない方が良い羽毛ふとんの代表格です。羽毛ふとんの状態そのもの傷みや汚れ具合ではなく、赤丸で囲った部分の縫製にご注目ください。『直接キルト』と呼ばれる縫製の仕方になっています。

ちなみに最近の羽毛ふとんはこのような縫製のやり方になっています。『立体キルト』と呼ばれます。

これだけでは違いが分かりにくいと思いますので『直接キルト』と『立体キルト』の違いを手書きのイラストにしてみます。

羽毛ふとんが普及し始めた頃(昭和の終わり頃から平成の始めにかけて)に作られた羽毛ふとんは、現在のような縫製技術がなかったので『直接キルト』でした。ただし、問題は縫製のやり方そのものではなく、中身の羽毛の質です。

『直接キルト』の羽毛ふとんの中には、ほとんどの場合『羽毛』ではなく『羽根』が入っています。

3.重要なのは中に入っている羽毛の質

写真の羽毛をダウン率で表示すると、ダウン50%、フェザー50%といったところです。現在ではこのようなタイプは『羽毛ふとん』ではなく『羽根(はね)ふとん』と呼ばれます。

家電製品でも何でも新しいものが出回り始めた頃は、後から見ると品質が劣る物が、随分と高価に売られます。逆に言うと、普及すればするほど性能の良いものが安価で販売されるようになります。羽毛ふとんも例外ではなく、出回り始めた頃は直接キルトの羽根ふとんが数十万円で売られていました。しかしながら現在では市場価格数千円の品です。

こういった羽毛ふとんを用いてリフォームした場合、確かに側生地は新しくなりますが、中身の羽毛の大部分は『羽根』ということになります。

ちなみにシングルサイズで羽毛1.3㎏入りの羽毛ふとんをリフォームする場合、中身の羽毛を取り出して除塵・洗浄・乾燥することで、傷んだものが取り除かれ、通常の場合1.0㎏程度まで羽毛が目減りします。これに足し羽毛といって新しい羽毛を0.3㎏足すことで、新しく1.3㎏入りの羽毛ふとんを作ります。この場合比率としては古い羽毛1.0:新しい羽毛0.3となります。

そのため
・十分なかさ高が出ず『暖かくない』
・羽根の軸の感触のため『使用感が悪い』
という事になります。

そのため、このような直接キルトの羽毛ふとんの場合、リフォームするのではなく、買い替えをお勧めしております。

4.リフォームしない方が良い羽毛ふとん

まずは羽毛ふとんの品質表示をご確認ください。最低でもダウン率85%以上の物。出来ればダウン率90%の物に関して、当店ではリフォームをお勧めします。逆に言うとダウン率がそれよりも低い物は、リフォームするのではなく買い替えをお勧めさせていただいています。

一般的に下記のような羽毛ふとんの場合は、リフォームするのではなく、新しく買い換えることをお勧めしています。

・直接キルトの羽毛ふとん
・ダウン率が85%未満の羽毛ふとん
・もともとのご購入価格が3万円未満の羽毛ふとん
・傷み方の激しい羽毛ふとん
・上から押さえてみて反発力の無い(ペタペタの)羽毛ふとん

5.大切なのはコミュニケーションと専門的知識に基づく提案力

ただしその羽毛ふとんに対する“思い入れ”という部分も大切です。

少々品質的に問題があったとしても『結婚の時に両親に買ってもらった布団だから、捨てるのではなく、何とか再生したい』とおっしゃるお客様が多くいらっしゃいます。

そういった方に対して『この羽毛ふとんはモノが良くないのでリフォームするだけ無駄です。買い換えましょう。』などというのは間違ったご提案となります。

 

やはりお客様一人ひとりのご要望に応じ、ご提案をするのが寝具のプロの仕事と言えるでしょう。

・通常の場合よりも足し羽毛の量を多めにしてふっくら仕上げる
・足し羽毛をせずに、薄く仕上げて、羽毛合掛け(秋冬用の羽毛ふとん)や羽毛肌掛け(夏用の羽毛ふとん)にする
などの対応が考えられます。

やはり大切なのは『コミュニケーション』と『提案力』です。

6.寝具のプロにご相談ください

以上書きました通り、羽毛ふとんのリフォームに関しては
①現在お使いの羽毛ふとんの状態の見極めた上で
②お客様のご要望をお聞きし
③最適なご提案(お見積り)することが重要となります。

最近は羽毛ふとんリフォームを取り扱うチャネルが増え、さらにはインターネットでも取り扱っているところがあります。その中でも、手前味噌な言い方になるかもしれませんが寝具専門店にご相談することをオススメします。その理由としては、寝具専門店の方が羽毛ふとんに対する知識が豊富だからです。

また羽毛ふとんリフォームと言っても、様々なファクターがあります。

①古い羽毛の洗浄方法
②足し羽毛の質
③古い羽毛と足し羽毛の比率
④新しい側生地の質
⑤縫製(キルト)
⑥キルトのマス目ごとの羽毛の充てん量の配分

これらのやり方、さらにはその組み合わせでリフォームした羽毛ふとんの仕上がりは大きく左右されます。

やはり繰り返しになりますが、大切なのはきっちりしたコミュニケーションと専門的知識に基づくご提案です。人生の3分の1の時間を費やす眠り、そのパートナーである羽毛ふとんをより良い状態でお使いいただくために、最寄りの寝具のプロにご相談されてはいかがでしょうか。

この記事は自称『日本一文章を書くのが好きなふとん屋』が書きました

社長 石川克幸ストーリーはこちら

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自称『日本一文章を書くのが好きなふとん屋』

かつてはカネボウで化粧品研究員をしていました(口紅やマスカラの処方開発担当)。現在は縁あって(婿養子)香川県で『寝心地ラボ+ byふとんのせいぶ(西部製綿株式会社)』の社長をしています。自称『日本一文章を書くのが好きなふとん屋』です。広島県出身の熱狂的カープファン。現在56歳ですが、9歳と6歳の男の子のおっさんパパ。『寝具』や『眠り』のことだけでなく、『子育て』のことを書くこともあります。もと研究員だけあってかなり理屈っぽいですが、出来るだけ読みやすい文章を心がけています。
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